「複数の会社から内定をもらったけど、どの会社を選べばいいか分からない…」このような悩みを抱えていませんか?
せっかく複数の内定を獲得したのに、選択を間違えて後悔してしまうことは避けたいものです。
IT転職において複数内定を得られることは、あなたのスキルと経験が評価された証拠です。
しかし、どの会社を選ぶかは今後のキャリアを大きく左右する重要な決断となります。
筆者は、転職活動で3社から内定を獲得し、熟考の末に選択した経験があります。
本記事では、筆者が実際に3社から内定を得た際のリアルな思考プロセスを元に、後悔しないための判断基準を徹底解説します。
この記事を読めば、転職エージェントの活用術や、後悔しないための考え方も含めて、あなたが自信を持って選択できるよう実践的なアドバイスを提供します。
IT転職で複数内定 嬉しい悩みと選択の重要性

これまでの努力が実り、複数の企業から「あなたと一緒に働きたい」という評価を得られたことは、転職活動の成功の証です。しかし、その喜びと同時に、新たな悩みが生まれます。
特にIT業界では、技術トレンドの変化が激しく、選択した会社が5年後、10年後のキャリアに与える影響は計り知れません。
複数内定は成功の証であり新たな悩みの始まり
複数の企業から内定を獲得することは、あなたのスキルと経験が高く評価された証拠です。
書類選考、面接を突破し、複数の企業に「ぜひ来てほしい」と思わせたのは素晴らしい成果といえます。
どの会社を選ぶかという新たな悩みが生まれます。各社が魅力的な条件を提示するほど、選択の難しさは増していきます。
嬉しい悩みではありますが、この選択があなたの今後のキャリアを大きく左右することを考えると、決して軽視できない重要な判断となります。
ここでの選択があなたのキャリアを左右する
転職先の選択は、単なる職場の変更ではありません。
あなたの技術的成長、年収の推移、働き方、そして人生そのものに大きな影響を与える重要な決断です。
IT業界では、どの技術領域を経験するか、どの規模の案件に携わるか、どんなチームで働くかによって、エンジニアとしての市場価値が大きく変わります。
筆者も3社から内定を獲得し、どの会社も魅力的でしたが、明確な判断基準を設けることで後悔のない選択ができました。
【体験談】3社の内定から1社を選んだリアルな思考プロセス

転職エージェントを利用した2019年の転職活動で、筆者は3社から内定を獲得しました。
それぞれに魅力があり、一社に絞り込むのは非常に困難でした。まずは、各社の特徴とオファー内容を正直に公開します。
必須条件:
- 年収アップ(650~700万円)
- クラウド案件への参画
- 通勤時間1時間以内
できれば条件:
- 課長・部長以上のポジション
- IPO(上場)を目指している企業
これらの条件は、技術的成長と経済的安定の両方を実現するために設定したものです。
内定先A社 大手SES企業ならではの安定感とキャリアの幅
A社は大手SES企業で、ITエンジニアが2000人以上在籍する規模の大きな会社でした。
研修施設が完備されており、体系的な学習環境が整っていることが大きな魅力でした。
- 規模:大手SES企業
- 特徴:ITエンジニア2000人以上・研修施設完備
- 事業:SESが主力(請負案件は小規模)
- ポジション:メンバー
- 年収:希望650万 → 提示640万
経営基盤が大きく、給与テーブルも明確。一流のSIerで技術派遣されることで、キャリアの土台作りができる可能性を感じました。
内定先B社 エンジニアを大切にする風土とプライム案件
B社は中小SES企業でしたが、エンジニアを大切にする企業文化が印象的でした。
面接官の人柄も良く、普段からいい雰囲気で仕事をしていることが伝わってきました。
- 規模:中小SES企業
- 特徴:エンジニア約100名、研修設備なし
- 事業:SESが主力だが、自社上流のプライム案件もあり
- ポジション:AWSチームリーダー
- 年収:希望650万 → 提示600万
面接官の人柄が素晴らしく、企業の財務情報まで見せてくれる誠実さに惹かれました。「エンジニアを大切にしたい」という気持ちが制度や評価に表れている会社でした。
内定先C社 新規事業立ち上げへの挑戦
C社は中小SES企業ながら、新規事業への挑戦意欲が高い会社でした。
AWS研修センターの立ち上げという、やりがいのある提案をいただきました。
- 規模:中小SES企業
- 特徴:エンジニア約300名、研修設備なし
- 事業:SESが主力、自社製品もあり
- ポジション:課長(研修サービスの新規立ち上げ)
- 年収:希望650万 → 提示615万
「これからAWS研修サービスを立ち上げたい」という、ゼロイチの挑戦に携われる非常に魅力的な提案でした。コスト意識の高さも伺え、将来性を感じました。
後悔しないための判断基準 3つの「本音の軸」

複数の内定先を比較する際、感情に流されず客観的に判断するための基準が必要です。
ただ、表面的な条件だけでなく、10年後の自分から逆算して、その基準に合うかどうかも重視しました。
筆者が転職エージェントにも伝えていた、本音の判断基準は以下の3つです。
基準1 社員を大切にしている会社か
これが最も重要でした。会社が数字達成のために社員を「道具」として見ているか、それとも共に成長する「仲間」として見ているか。
この基準を最も重要にした理由は、転職前の会社がプライム上場企業で社員が200名程度の会社でしたが、社内イベントや催し物を、結構ガチで行う会社だったので、とてもアットホームでした。
社員を大切にする会社は、長期的な成長を支援してくれる環境が整っています。
どんなに給料が良くても、大切にされていないと感じる環境では心が疲弊してしまう。だからこそ、会社に「愛」があるかどうかを第一の基準に置きました。
会社を通じて社会貢献ができ、仕事を好きになれる環境かどうかも重要な判断基準でした。
基準2 キャリアパスや研修設備は充実しているか
ITエンジニアとして継続的な成長を続けるためには、学習環境の充実が不可欠です。40歳を目前にして「クラウド技術を勉強し、まだまだエンジニアとして最前線に居たい」という強い思いがありました。
特に事業会社からSIerに転職する場合、体系的な学習機会が重要になります。事業会社では独特の癖があるため、体系的に学べる環境が整っているSIerの方が基礎固めには適していると考えました。
将来的にはコンサルティングのような働き方も視野に入れており、そのためにはまず一流の現場でしっかりとした技術的な「土台」を作る必要があると考えていました。
研修制度の充実度、会社の規模感、技術領域の幅広さなど「他よりも圧倒的な成長」が実現できる環境かどうかは、重要な判断軸でした。
基準3 10年後に年収を2倍にできるか
希望年収650万円以上は、自分の市場価値と生活の安定のための必須条件でした。転職の最終的な目標は、長期的な年収アップとキャリアの発展です。
ただお金が貰えれば良いわけではありません。筆者にとってお金とは「他者からの感謝のしるし」です。つまり、公正な評価制度のもと、自分の働きがきちんと報酬に反映されることが重要でした。
満足のいく給料は、自分の仕事に集中するための基盤であり、未来の自分への大切な投資だと考えていました。
【補足】事業会社とSIer間の転職で考えるべき視点
筆者は、事業会社とSIerを往復したことでその違いを体験しています。
事業会社→SIerへの転職では、体系的なプロジェクト経験と幅広い技術経験を得ることができます。
一方、SIer→事業会社への転職では、新しい領域への挑戦や社運を掛けたプロジェクトに参画することで当事者意識と継続的な責任がより強く求められます。
事業会社では有償工数や無償工数の概念がないため、工数を気にせず案件をやり切ることができます。
どちらの環境も一長一短があるため、自分のキャリアステージに合わせて選択することが大切です。
【補足】面接で断る場合も大事
転職エージェントを利用する場合、大体のエージェント会社は30社以上に応募をします。理由は最終的に内定を1件取るためには、5〜10%程度と言われてる為です。
30社に応募を行い、書類選考が通るのは50%程度です。筆者は15社ほど面接を行いましたが、最初から合わないと思った会社は5社ぐらいあり、面接後にエージェントを通して辞退を申し出ました。
面接の際に会社を選ぶ基準を聞かれた場合は、恥ずかしがらず正直に言うことが大切です。筆者は面接官に「そんな会社は無い」と言われたことがあります。
面接官は会社の顔ですので、面接官と合わない会社は辞退するべきです。
基準を決めておけば面接段階でお断りすることで、双方、無駄な時間を過ごすことはありません。
最終的な決め手は10年後の自分から逆算したキャリア

3つの基準で各社を比較した結果、最終的にA社を選択しました。
キャリアパスはどの会社も魅力的でしたが、10年後の目標を達成できる可能性が最も高いと判断したからです。
短期的な条件だけでなく、長期的なキャリアビジョンを重視した選択でした。
3つの基準で各社を比較した結果
各社を3つの基準で評価した結果、A社が最もバランスが取れていました。
社員を大切にする姿勢、充実した研修制度、明確な給与テーブルが決め手となりました。
A社:エンジニア・マネジメント・コンサルのどの領域も幅広く持っており、成長できる環境が整っていました。
B社・C社:魅力的な条件でしたが、AWS以外のクラウドサービスも触りたいという希望に合わなかったため辞退しました。
各社とも素晴らしい条件でしたが、自分のキャリアゴールに最も合致するA社を選択しました。
描いたキャリアと年収のロードマップ
10年後に年収1,200万円を達成するという明確な目標を設定し、そこから逆算してキャリアを構築しました。
筆者は当時、以下のような年収チャートを自分の中で描いていました。目標は50歳で年収1200万円です。
年齢 | 年収 |
---|---|
35歳 | 550万円 |
40歳 | 600万円 |
45歳 | 800万円 |
50歳 | 1,200万円 |
A社の給与テーブルでは1000万円以上が明確になっており、頑張った分だけ評価される仕組みが整っていました。
この記事を執筆している現在は、45歳の年収800万円も達成しています。
なぜA社を選んだのか B社C社を選ばなかった理由
最終的に、筆者はA社を選びました。最大の理由は「一流の会社で技術派遣されることで、キャリアの土台作りが最も早くできる」と考えたからです。
大手SES企業であるA社なら、大手SIerの優良なプロジェクトにアサインされる可能性が高い。そこで基礎を固めることが、年収ロードマップ達成への最短距離だと判断したのです。
B社とC社は魅力的でしたが、筆者の希望はAWS以外のクラウドサービスも触りたいというものでした。
長期的なキャリアを考えると、幅広い技術経験を積める環境が重要だと判断しました。
複数内定の比較検討を成功させるエージェント活用術

今回、筆者が3社を同時に比較検討できたのは、転職エージェントの担当者のおかげです。特に内定承諾期間の調整は、個人では難しい交渉となります。
3社とも内定期間がバラバラでしたが、エージェントの調整により同時に比較検討できました。このノウハウは非常に重要なので共有します。
内定承諾期間が揃わない「内定出しタイミング問題」
複数社の選考を受けていると、内定が出るタイミングはバラバラになりがちです。
A社の承諾期限が来た時点ではB社の面接が終わっていない、という状況では冷静な比較ができません。
筆者の場合は、A社は2週間、B社は1週間、C社は3日間と、それぞれ異なる期間を設定していました。
このタイミングのずれにより、十分な比較検討ができないまま決断を迫られるケースが多々あります。
転職エージェントが持つ内定期間の情報があったからこそ、適切な調整が可能でした。
エージェントは内定承諾期間を調整してくれる場合もある
転職エージェントは企業との関係性を活かし、過去のデータも含めて内定承諾期間を事前に把握しています。
筆者の場合、3社のオファー面談を重なり合うように調整して貰えました。
エージェントが内定承諾期間を合わせてくれた為、筆者は3社のオファーを同じテーブルに並べて比較することができました。
個人では難しい内定承諾期間の調整も転職エージェントの専門性があれば可能になります。
交渉成功の鍵はエージェントとの誠実な情報共有
エージェントとの信頼関係を築くためには、誠実な情報共有が不可欠です。
エージェントに対して「どの会社も魅力的で真剣に悩んでいる」という誠実な姿勢を見せることが不可欠です。
エージェントに対して嘘をついたり、情報を隠したりすると、適切なサポートを受けられません。
透明性の高いコミュニケーションが成功の鍵となります。
他社の選考状況や希望条件を正直に伝えることで、最適な調整をしてもらえました。
転職後のリアルと伝えたいこと 「成長」の本当の意味
転職は人生の重要な選択ですが、完璧な正解は存在しません。
熟考して選んだ会社であっても、その後の状況変化により再度転職を検討することもあります。
最後に、この転職後の話を正直にお伝えします。ここからが、この記事で最も伝えたいメッセージです。
熟考して選んだ会社も1年半で再度転職した話
A社を選んで入社し、運良く超大手SIerに技術派遣されることになりました。
1年目にはPMOの基礎を教えてくれた先輩エンジニアと出会い、一緒にプライベートクラウド案件アサインされ、いい経験が出来ました。
「他よりも圧倒的な成長」で選んだ為、2年目に入ると状況は一変。
自分のキャパシティを遥かに超える高負荷なプロジェクトを任され、正直無理だと感じる中で毎日勉強し、日記を付けて改善を繰り返した結果、地獄のような日々は2ヶ月で終わりました。
次のプロジェクトでAzure案件を任されて、念願だったAWS以外のクラウドを経験できました。その後、縁がありAWSの教育会社に転職したので、熟考して選んだ会社も1年半の在籍でした。
「成長のための転職」のリスクと新たな気づき
転職を「成長のため」と位置づけることは一見正しいように思えますが、実際には大きなリスクを伴います。
筆者の経験から、成長を目的とした環境変化の落とし穴を実感しました。
自分のキャパシティを超える業務を引き受け続けると、うつ病のリスクも高まります。自分の出来ることを理解し、引き受ける場合はサポートが必要な仕事か考えることの方が重要だと気づきました。
成長のために環境を選ぶことも大切ですが、体を壊すほどの環境に身を置くとこはよくありません。
仕事と生活のバランスを重視し、物事に集中できる環境を整えることが本当の成長につながると学びました。
結局は自分次第 どんな環境でも成長はできる
転職において完璧な正解はありません。
重要なのは、明確な基準を持って選択し、その後の行動で選択を正解にしていくことです。
高負荷なプロジェクトを乗り越えた経験を通して、筆者は重要な気づきを得ました。
それは会社や環境が自分を成長させてくれるのを待つのではなく、どんな状況でも自ら学び、道を切り開く力が最も重要だということです。
自分が思う基準を明確にして、後から振り返っても後悔のないようにやり切ることが大切です。
どれだけ考えても正解はないので、自分の価値観に基づいて決断し、その道を全力で歩むことが重要です。
【複数内定】会社を選ぶ|IT転職で後悔しないための判断基準:まとめ

IT転職で複数内定をもらった時に後悔しないための判断基準について、筆者の体験談を元に解説しました
複数内定を獲得することは、あなたのスキルが評価された証拠です。
しかし、選択を間違えると今後のキャリアに大きな影響を与えるため、明確な判断基準を持つことが重要です。
この記事でご紹介したポイントをおさらいしましょう:
- 3つの判断基準を設定する:
- 自分の根っこにある信念を言語化して3つ基準を設けましょう
- 転職エージェントを活用する:
- 内定承諾期間の調整や条件交渉など、個人では難しい部分をサポートしてもらいます。
- 長期的なキャリアビジョンを重視する:
- 短期的な条件だけでなく、10年後の自分から逆算して選択することが大切です。
最後に、転職において完璧な正解は存在しません。
大切なのは、その時点で最善の判断を下し、自分で決めた道を正解にしていく覚悟を持つことです。
あなたが複数内定の選択で悩んでいるなら、まずは自分なりの判断基準を明確にしてみてください。
その基準に基づいて選択した道が、あなたのキャリアを大きく発展させる第一歩となるはずです。
転職活動についてさらに詳しく知りたい方は、次の記事もご覧ください。
第7回 転職活動実践ガイド 【退職準備】退職を切り出すタイミングと円満退職術